01. Ys(イース)
Music From Ys Series (1987、1988、1989年)
ゲーム発売元:日本ファルコム / TAPE&CD発売元:キングレコード
MEMO:たぶん全て廃盤
Review
さて記念すべき最初にお送りするのは、私が最初に買ったパソコンゲーム「Ys(イース)」です。
何故このゲームを買ったのか?
…それはゲームの発売日が私の誕生日と同じだったからです(安易)。
しかし、何も知らずに買ったこのイースとの出会いが私と日本ファルコムを深く結び付けてく事になるんですけどね(苦笑)。

さて、このイースという作品は結構シリーズ化されているのですが(確か「イース5」くらいまで出ていた気がする)、私たちが通常「イース・シリーズ」と言ったら最初の「アドル3部作」のことを意味します(ゲームの主人公が「アドル」というのです)。
あるいは「イース」と「イース2」だけという人もいますね(「イース3」はイースという国のお話ではありませんから)。
そして、そのイースのサウンドトラックが「Music From Ys」「Music From Ys2」「Music From Ys3」の3つになります。

そう「Music From Ys」こそ、私が生まれて初めて買ったゲームミュージックのテープです。
…あ、当時はまだCDというものがなかった時代でした(苦笑)。最初にあるジャケット写真はその後(1989年)にCD化されたものです(…つまり私はテープとCDの両方を持っている)。
そして、このサントラに収録されている楽曲のほとんどを手掛けたのが今や伝説の人となってしまっている古代祐三氏です。

ゲームミュージックの話をするうえで避けては通る事の出来ない人物のひとりがこの古代氏。
父親は画家、母はピアニストという芸術一家に生まれ育ち、あの久石譲さんにピアノを習っていた事もあるなかなかすごい方なんですね(ちなみに妹の古代彩乃氏はイラストレータですね)。
 早くからコンピュータ・ミュージックというものに目覚めた古代氏は、発売されたばかりのPC-88mk2SRという初めて「FM音源」の搭載されたパソコンを使い、「YK-2」という名前で「マイコン・ベーシックマガジン(通称:ベーマガ)」のゲームミュージック・プログラムコーナーに彗星のように現れます。
ちょっと待った、「FM音源」って一体なに?…という方もおられるでしょう。
知らない方のなかでYAMAHA(ヤマハ)の「DX7」というキーボードを知っている方なら、その発声原理は一緒ですので説明は不要かと思います。
…FM音源とは、簡単にいえば音の波形(三角波とかノコギリ波とか音の要素となる波形)を加工して色々な音(限界はあります…)を作り出すことが出来る音源です(ちなみにPC-88シリーズに載っていた音楽チップの名前は「YM-2203」と言います。YMだからYAMAHAの音源チップですね)。
…もっと簡単に言うと、いまの携帯の着信音と同じ音が出ると思って下さい。
今では携帯でもサンプリング(実際の音を録音したものを再生する方式)や、ゲームではCD再生、MIDI音源が主流になっていますけど(苦笑)。
音源についてはまた出てくると思いますので、その時に詳しく説明します。

さて話を戻しましょう。
その古代氏は、ベーマガでゲームミュージック・プログラムを連載している時に、実は後に「Ys」を製作することになる「日本ファルコム」という会社に入社して、これも名作と云われる「Xanadu(ザナドゥ)」というゲームの音楽を作曲していたんです。
その頃から「あの作曲者は何者だ?!」とゲームミュージックマニアの間では注目されていたんですね。
そして1987年。
「Ys」という革命的なゲームの発売によって、ようやく一般的なゲームミュージックファンにもその音楽と古代裕三という名前が知られる事となります。
ここから10年にも渡るゲームミュージックブームが到来していくのです!

…と、このあたりの話はまた別の機会にする事にして、この「Ys」について少し説明をしましょう。
当時、難解と言われていたパソコンゲーム業界に、誰でもクリアの出来る優しいロールプレイングゲームを!というキャッチコピーのもとに誕生した「Ys(イース)」。
そしてその続篇として登場した「Ys2」と、更にその後の主人公の物語を綴った「Ys3」。
 そのYsとYs2は、2001年に「Ys1&2エターナル」としてWindows版にてリメイク発売されているので知っている方やプレイされた方も多少はおられるのではないかと思います。
 当時、ファミコンあがりの私が「こんなにも奥深いストーリーがあったのか!」と、まだ不慣れなテンキーと「Z」「X」キーを使いながら勉強する間も惜しんでプレイしててね。
友人も集まってね。…最強の防具を1つ取り忘れていて4回攻撃に当たるとゲームオーバーになってしまうような中ボスを倒してくれたI籐氏の姿は今でも忘れない(苦笑)。
当然ゲームの完成度は云うまでもなかったのですが、その後ろに流れるBGM音楽があまりに印象的だった事を今でも覚えているし、ゲーム内容もほとんど忘れてない。
…それはいったい何故なんでしょうか?
「ゲームミュージック」とは、文字のごとくゲームが存在している事が前提として発生してくる音楽ですね。
しかし、色々なゲームをプレイをされた方なら判ると思いますが、たとえそのゲームをプレイをしていなくてもその音楽を聴くだけでそのゲームの場面や思い出が脳裏に浮かんでくる場合があると思います。
あとね…ゲームセンターのゲーム音楽(苦笑)。
聞きたくても聞き取れなかったりするんですよね…実はかっこいい曲なのに。
ここで初めてゲームミュージックが単独として成立しうる要素が出てくるのです。
あのゲームの音楽を効果音なしで思う存分に愉しみたい…。
ゲームミュージックCD(テープ)とは、そんな私的な欲求がもたらした産物だと思うのですね(今では随分と音も進化し、色々な場面でインストゥルメンタル音楽として流されるようになりましたけどね)。
…そういえば私もサントラが発売される前に、パソコンとラジカセを繋いでマイサントラとか作ってましたね、ゲーセンにいって録音した記憶も有ります(苦笑)。
これがまずひとつめの要因。
 もうひとつは、「限られた音源のなかでいかに素晴らしい音楽を作れるか」という全国のゲームミュージックプログラマーの手本としての存在があるんです。
今ではゲーム音楽を作るうえで音数や音色が制限されることはあまりありませんが、当時のPC-88シリーズには音色をある程度自由に作れるFM音源3音と、音色を自由に作ることの出来ないPSG音源3音という合計6音しかありませんでした。
 アマチュアゲームミュージックプログラマー達にとってゲームミュージックCDとは、限定されたなかで編み出されたテクニック解析の格好の材料であり宝庫だったのです。
それ故にプロのゲームミュージックコンポーザーは、いい加減な曲を作る事は許されなかった時代でもありました。
そんな厳しいゲームミュージック業界のなかで、その抜群の音楽センスとサウンドテクニックによりいきなり頂点に座ってしまったのがこの古代祐三氏。
「無駄な音はなにひとつなかった時代」と、当時シンセサイザーを扱い始めた久石譲さんも言っていましたが、制限された音源のなかで常にその限界と戦い続けるサウンド作りをする彼の曲はそう簡単に真似の出来るものではなかったのですね。

ひとつ例を出しましょう。
あなたがケータイの着メロを作るとします。
例えばあなたのケータイの使える和音数が3音しかないとすると、曲を作る際に鳴らすパートをどうしますか?
まずメロディとベース、あとは好みによりドラムかコードメロディを入れる事になるでしょう。
これが一般的な選択ではないかと思います。
しかし古代さんのサウンドテクニックとは、例えば3和音しかないのにメロディとベース、ドラムにコードメロディの4音も入ってるように聞こえちゃうところなんです。…しかも御丁寧にエコーまで掛かっちゃったりしてるオマケつきでね(苦笑)。
…どーやって作ってるんだろうって思いません?
こうしたテクニックや音の音色を全く同じようにコピーする事が当時のステータスのひとつだったんです。
…或いは、もうその曲を完全にコピーしようとする事よりも「その限界のある音楽自体に魅力を感じていた時代」だったのかもしれませんね。
だからこそ、扱うパソコンがMSX(という機種)でPSG音源が3音しかなくてもPC-88シリーズで作られたゲームミュージック音楽を再現しようと頑張っていたり、ゲームセンターのゲーム音楽や日本の歌謡曲をPC-88シリーズで表現しようとしていたのです。
当時、ベーマガのゲームミュージックコーナーでもその殆どがローエンドでハイエンドのマシンの曲を再現するとか、原曲そっくりに作るとかだった気がしますね。
…やはりハイエンドなマシンで作っても面白くないというか(苦笑)。
例えば、FM音源6音にPSG音源3音に加えてサンプリング機能まで使えるとしたら、FM音源3音とPSG音源3音しかないPC-88シリーズの曲なんて簡単に再現出来ちゃいますよね?
そこがポイントなんです(笑)。
…実はいくらハイエンドなマシンであっても完全コピーは不可能な場合が多かったんですけどね。
それだけ音楽プログラムの中で何をやっているのかが判らなかったんです。…いや、判っていたとしても音色を似せる事が至難の業だった(苦笑)。
とにかく、その限界性を超えるようなサウンド作りと完全なコピーを作れるくらいの理論&プログラムテクニック。
これを上手く表現出来ること=当時のアマチュアゲームミュージック界での実力になっていたのですね。
…いま思えば特異な世界ですよね(苦笑)。
私はその限界性のなかで自分の表現したいものはもう出来ないと思って止めたんですけど、限界のあるものが嫌いになった訳じゃありません。
どちらかというと障害とか制限があったほうが燃える人も多いでしょうし(笑)。

…と話をまとめに入りますが、この「Music From Ys」という作品は殆ど全てのゲームミュージックファンにとっての目標となったのと思うのですね。
今だに「日本ファルコム」という会社自体がイースという巨大な影を振り切れずにいるくらいに。

最期にあえて書かせて頂きますが、特にお気に入りの曲は「Feena(オープニング曲)」と「The Tower of The Shadow of Death(ダームの塔で流れる曲)」&ボツ曲の「Crossroad of Sadness」。
ちなみに「ボツ(没)曲」という表現はこのゲームが発祥なんですよね。
…あと「デカキャラ」という表現もファルコムのゲームから出てきた造語だったりします(苦笑)。
もし「Ys2」でこの曲!…と言われたらオープニングの「TO MAKE OF THE END OF BATTLE」と「COMPANILE OF LANE(神殿の鐘つき堂で流れる曲)」が大好きです。
「Ys3(別名「ワンダラーズ・フロム・イース」という)」は、実は古代祐三氏の作曲ではないのですが、あえて選ぶとするなら「バレスタイン城」という城に乗り込んだ時の曲でしょうか。
特に「Ys」の「The Tower of The Shadow of Death(ダームの塔)」と「Ys2」の「COMPANILE OF LANE(神殿の鐘つき堂)」。
この曲をコピーするためにどれだけテープを繰り返し聞いたことか!
…一応作ったには作ったんですが、友人の「…似てない」の一言によりそれ以上のアプローチを断念しましたけどね(苦笑)。
そうそう、もしも機会があったら是非Windows版の「Ys1&2 エターナル」をプレイしてみて下さい。
その素晴らしいメロディや雰囲気を少しでも感じていただけらた幸いです(私はプレイしてないので曲がどうなっているかはわからないけどね…無責任?)。
ホントの最後に謝っておきます!
今回は気合入りすぎて訳わかんないくらい長くなっちゃって、しかも意味不明な事が多くてぜんっぜん曲について触れてないですよね(苦笑)。…次回はもっと、優しく。
それじゃ、アディオス!

2002.02.23

おまけ やっぱり曲がないのも寂しいんでMIDI音源で作られたイースの曲をお送りします。
あ、私が作ったのではなくってWeb上で色々なところから拝借してきたものです。
…でもね、実はあまり良い作品がなくて困りました(苦笑)。
何故って、原作をプレイした事のない方や原曲を聴いた事のない方(?!)が作っていらっしゃったりする場合が結構多かったからです。…ちょこっとショックなんですが。
しかも、MIDIコレクションという形でCDを売ってる本家、日本ファルコムのサンプルMIDIがなかなかに酷い…。
これでもプロか?って出来ですが…あえて掲載しました(サンプルなので中途なカンジになってます…こういうせこいトコも嫌い)。
…それでもこのサンプル以上原曲に似ているものがないという現状も悲しい。
なんて、たまには毒を吐かねば(笑)。
あ、きちんと版権とってないんで非常にこっそりと聴いて下さい。
ああ、MIDIライセンス有るから大丈夫か(…んなわけない!)。

FEENA
(Music Composed by 古代祐三 / MIDI Composed by 伊三次)
THE LAST MOMENT OF THE DARK
(Music Composed by 古代祐三 / MIDI Composed by Falcom)
TO MAKE THE END OF BATTLE
(Music Composed by 古代祐三 / MIDI Composed by Falcom)