04. Dragon Spirit(ドラゴンスピリット)
ビデオゲーム・グラフィティ Vol.2 (1987年)
ゲーム発売元:ナムコ / LP&TAPE発売元:ビクター音楽産業
収録内容:ドラゴンスピリット、トイポップ、ブレイザー、ワンダーモモ、サンダーセプター、妖怪道中記(アレンジ)。
Review
ナムコのゲームといえば、もうありとあらゆる名作が存在します。
「ゼビウス」「ローリングサンダー」「ワンダー・モモ」「ワルキューレの伝説」「ギャラクシアン3」「リッジレーサー」「鉄拳」etc…。
その中で、いまだかなり多くのコアユーザーの記憶にある作品といえば「DRAGON SPIRIT(通称:ドラスピ)」じゃないのかなと思います。
ドラスピとは、1987年にアーケード・ゲームに登場した縦スクロールのシューティングゲームです。 ナムコの新基板「SYSTEM1」を使い、YAMAHAの新FM音源サウンド・チップ「YM-2151」を搭載した驚異的なアーケード・ゲームでした。
敵の多彩な攻撃を躱し、画面の半分以上のあるボスキャラが動くその存在感。
そこを盛り上げるのは、重低音の効いたハイクオリティなサウンド。
ここで触れるのは、もちろんその音楽の心臓部である「YM-2151」。
このFM音源チップは、こののちに発売された「X68000」というパソコンのサウンド音源にもなっていて、音の同時発音数が8音という、当時としては最高品質ともいえる音源チップでした。
そしてこの音源を使い、ゲームの曲を担当したのが細江慎治氏(別称:めがてん細江さん)。
初めてこのゲームの曲を聞いた時、あまりのクオリティの高さに愕然としました。
どうやったらこんな格好良いメロディが作れるんだろう?
この音色や表現はどうやって作ってるんだろう?
全てが謎であり、その全てがスピーカーから流れていました。
…テレコ持っていってゲーセンで録音してましたよ、冗談抜きに(苦笑)。
ゲームミュージックというものが音楽業界で注目され、テープやレコードが徐々に発売され始めたのは、この1987年頃。
…しかし、地方にはそういう情報はなかなか伝わってこないし、テープやレコードも殆ど入荷しませんでしたからね。
欲しいものは自分達で録る。
これが私達の基本でした。
…何かそこまで私達を熱くさせていたんでしょうか?
もちろん、そのサウンドを家でも聴いていたい!という単純な理由もありましたが、やはりゲームに対する思い入れが大きかったのじゃないかと思いますね。
グラフィック、サウンド、ゲーム性、全てのクオリティが高かったからこそ好きになったし、お金も注ぎ込んだのです(苦笑)。
当時では、かなり斬新なつくりのシューティングゲームでしたし。
例えば、アイテムを取ることによって攻撃口であるドラゴンの首が増えるんです(最大3つ)。
また、その攻撃する火力もどんどんパワーアップできるのだけど、首が3つになると当たり判定が厳しくなったり、火力が強くなると逆に攻撃に隙が出てきたりして、むやみに強力にも出来なかったりするという、かなりの戦術性が問われていたり。
あと、エクスステンドというアイテムを3つ取ると1UPするんです。
1つ取ると画面下に卵の表示がでて、もうひとつ取ると卵からひながかえり、最後のひとつでめでたく1up。
このゲームの凄いところは、その1UP途中の卵の状態が、ゲームオーバーになっても次のゲームに引き継がれるという点です。
…つまり、あと1つで1UPだったプレイヤーのあとにプレイすれば、卵を1つとっただけで1UPしちゃうのですね(苦笑)。
でも、そんなラッキーを拾っても、私達には到底クリアは出来なかった(笑)。
何処まで行ったかな?
全8ステージのうち、行けて6面とか?
たいていは3面のジャングルあたりでお亡くなりになってたような気がしますね(苦笑)。
確か、初めてクリアしたのはPCエンジン版に移植されてからでした。
似ても似つかないようなゲームでしたが、それでも「あのドラスピが出来る!」と興奮したものです。
…それでも難しかった記憶もありますが(笑)。
アーケード版でも、あまりに難易度が高いとのクレームが出て、途中から難易度を下げたバージョンが出まわったりもしたようですね。
そうそう、一番完成度が高かったのは、もちろんX68000版への移植でした。
プレイした事はありませんが、画像を見るかきりでは完璧でした。そして、そのサウンドもほぼ完璧と評価されていた事を思い出します。
この時は猛烈にX68000が欲しかったですね!(苦笑)

さて余談はここまでにして、そろそろサウンドについて書きましょう(笑)。
後に、このドラゴンスピリットの続編となる「ドラゴンセイバー」というゲームのサウンドトラックCDのなかで、作曲者の細江慎治氏は「ドラゴンスピリットで初めて曲を作った」と言っています。
実は、この作品が彼のゲームミュージック処女作だったのです。
しかもその前はグラフィックデザイナーだったとか(苦笑)。
当時はね、もうそれだけで愕然としました。
私もゲームミュージックコンポーザーを目指していましたからね、こんな人がごろごろいる世界に入り込んでも勝てる気がしないと思って(苦笑)。
下にあるMIDIを聞いて頂けると分かるのですが、そのサウンドは今でも充分に対応できるだけのメロディを持っています。
雰囲気があるという言い方でも良いのかも知れません。

現在と昔の音楽において決定的に違うのは音源や音質の差です。
サンプリングやCDによってボーカル入りの音楽になっても、基本的な音楽概念や音の使い方はあまり変わっていないと思うんですね。
音に制限がなくなり表現力が広がった、というほうが分かるでしょうか。
すごく作るのが楽になったとおもうのです。
…逆に、音数や音色に制限があった時のほうがその打ち込みテクニックは今とは比べようもないほど発達していたと思うんですけれど。
このレビューの「イース」のコーナーでも書きましたが、FM音源当時は1つの音だけでエコーを掛けたり、キーボードの音とベース音を鳴らしたり、休んでいるパートがないようにプログラムを組んでいたんです。
だからこそ、その謎を解明して同じテクニックを身に付けようとか、それを超える技を開発しようとか、FM音源8音で構成されているドラゴンスピリットの曲を、PSG音源(ファミコンの音源)3音だけで何とか表現しようとか、そういう制限ある空間をあえて楽しんでいたんですね。
…今ではプログラムも書かなくて良いし、各楽器ごとにパートを割り当てても余るくらいだし、その楽器の音もまるで生音のようにクオリティの高いものになっています。
時代は進んでいますからね、別に今の状態を憂いているわけではないのです。
ただ、そのような時代があったことを忘れないでいて欲しいなと思うだけです。
FM音源で作られた、独特のサウンドミュージック。
今の音楽に取り入れても面白いんじゃないかと思うくらい個性のある音。
その音楽も、個性があって、こだわりがあって、最新の打ち込みテクニックがあった。
そのメロディは今でも多くの人々の心に残っています。
ほんの少しだけ曲を聴いただけでも、色々な思い出が蘇ってくるんです。
それだけ、ゲームとゲームミュージックは深く、私達との繋がりも大きいのだと。
このドラスピでもその曲を聞くたびに、音楽をテレコに録音する為になるべく敵をかわして攻撃をせずにボスまで行き着いたりとか、友人と首を並べて攻略方法を考えたりとか、学校の開校記念日に自転車で1時間もかかる町まで行って50円玉を山積みにして1日中遊んでて補導されかけたりとか、色んな事を思い出すんです(苦笑)。
さて、今のゲームミュージックはどうですか?
イントロクイズのように、曲を一瞬聞いただけで分かるような曲はありますか?
深い思い入れのある曲が、幾つありますか?
昔はゲームメーカー名まで分かるくらいの違いがありましたけど、今はどうでしょう?
もちろん、現在のゲームミュージックは素晴らしい曲も多いです。
でも、昔よりハングリーなゲームやゲームミュージックが少なくなったような気がしませんか?
気持ちが多く込められているゲームは、それだけ多くの気持ちが伝わるものです。
あなたには、思い出に残るゲームは幾つありますか?
2003.10.12

おまけ …正直、作者には大変失礼ですが、私が推薦出来るほどのクオリティの持った曲はありませんでした。
FM音源の持つ独特の音を表現するのは難しいかも知れませんが…。
もう原曲を知らないユーザーが作ってたりもするし、時代が変わって人も変わるのかなあ。
もう少し、ソウルが欲しいです。

Dragon Spirit「AREA 1」
(Music Composed by 細江 慎治 / MIDI Composed by Roi)
Dragon Spirit「AREA 3」
(Music Composed by 細江 慎治 / MIDI Composed by Unknown)
Dragon Spirit「Zawel」
(Music Composed by 細江 慎治 / MIDI Composed by 清涼 銀河)
Dragon Spirit「ENDING」
(Music Composed by 細江 慎治 / MIDI Composed by ORC)

注意 もし著作権関係で問題がありましたらすぐに削除致しますので、ご面倒とは思いますが御連絡をお願い致します。
また、失礼ながらも敬称は省略させて頂きました。